Web制作会社はなくなるのか|AIで消える受託と残る役割

Web制作とAI 公開 2026.07.24 更新 2026.07.19 監修: 橋本雄太郎(NOTE INC.)
Web制作会社はなくなるのか

「web制作会社」と検索すると、候補に「なくなる」と出てきます。それだけ多くの人が、会社としての将来を不安に感じているということです。結論からお伝えすると、Web制作会社という業態がまるごと消えることはありません。ただし、「言われた通りに作るだけ」の会社は、選ばれにくくなっていきます。

この記事では、なくなると言われる理由を会社の視点で整理し、AIによって受託の仕事のどこが消え、どこが残るのかを見ていきます。あわせて、私たち自身が、記事制作などの受託から自社のサービスへ会社の軸足を移している途中の経験も、正直に共有します。移し終えて安泰になった、という成功談ではありません。会社として何を考え、どこで迷っているかの記録です。

「web制作会社はなくなる」と言われる理由

不安の背景には、いくつかのはっきりした理由があります。1つ目は、AIとノーコードツールの進化です。専門知識がなくても、そこそこ見栄えのするサイトが作れるようになりました。2つ目は、新規参入のしやすさです。大きな設備がいらないため、制作会社は次々と生まれ、供給が増えています。

3つ目は、価格競争の激化です。参入が増え、実績づくりのために安く請ける会社も多く、業界全体の相場が下がりやすくなっています。4つ目は、内製化の広がりです。多くの企業が、Web制作やマーケティングを自社の中で担おうとし始めています。作る敷居が下がり、供給が増え、内製も進む。この3つが重なって、「なくなるのでは」という不安が生まれています。

とくに影響が大きいのが、AIによるサイト自動生成の進化です。業種や目的を入力するだけで、レイアウトや配色、文章まで含めて、それらしいサイトを自動で組んでくれるツールが実用の域に入ってきました。これまで制作会社に頼んでいた「とりあえず形にする」段階を、お客さま自身が数分でこなせるようになりつつあります。ここだけを見ると、たしかに脅威に映ります。だからこそ、会社が提供する価値を「形にすること」から先へ動かせるかどうかが、これまで以上に問われています。

それでも、需要の土台は広がっている

一方で、Webを必要とする土台そのものは、広がり続けています。買い物も申し込みも、その入り口はWebサイトやLPです。経済産業省の調査によると、2024年の消費者向けEC市場は26.1兆円で、前年より5.1%増えました。人がWebで動く量が増えている以上、作って改善する仕事の総量は減っていません。

つまり、正確には「なくなる」のではなく、「選ばれない会社が減っていく」というのが実態に近いです。作る敷居が下がったぶん、ただ作るだけの会社は価格でしか比べられなくなります。逆に、成果を出す設計や、公開後の運用まで担える会社の価値は、むしろ上がっています。会社としての分かれ道は、この「作るだけ」から先に進めるかどうかにあります。出典: 経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年8月公表)(2026年7月取得)

AIで消えた受託作業、残った受託作業

会社の仕事を、受託の工程で分けて見ると、AIの影響がはっきりします。消えつつあるのは、型が決まった作業です。よくあるレイアウトのコーディング、バナーの量産、テンプレートに沿った小規模サイトの制作。こうした「手を動かせば終わる」部分は、AIやツールが速くこなせるようになってきました。

私たちも、記事制作などの受託の周辺で、非エンジニアながらAIを使って、簡単なLPやフォーム、作業を自動化する仕組みを作ってきました。その経験から言えるのは、残るのは「決める」「整える」「責任を持つ」部分だということです。誰に何を届けるかを決める企画、成果につながる設計、品質を保証する判断、お客さまの課題を深く理解する対話。ここは人と組織に残ります。

受託の工程ごとに、影響の出方を整理すると、力の入れどころが見えてきます。

受託の工程 AIの影響
ヒアリング・課題整理 人が担う(相手の事情や本音の理解が必要)
企画・設計 AIは案出しの補助。最終判断は人
デザインのたたき台 AIで大きく速くなる
コーディング(定型) AI・ツールに置き換わりつつある
品質チェック・公開判断 人が担う(責任の所在)
運用・改善 一部自動化、成果の判断は人

この表から分かるのは、真ん中の「作る」工程ほどAIに寄り、両端の「決める」「確かめる」工程ほど人に残るということです。会社として、型の作業に頼った受託ほどAIとの価格競争に巻き込まれ、両端の仕事を持つ会社ほど残りやすい、という差が広がっていきます。

受託から自社サービスへ、会社の軸足を移す

この変化を前に、私たちが会社として試しているのが、受託から自社のサービスへ軸足を移すことです。ここははっきりお伝えしますが、まだ移し終えていません。安泰になった成功例として語るものではなく、今まさに途中にいる、という前提で読んでください。

なぜ会社として自社サービスを考えるのか。理由は、受託だけに頼る形が、景気や元請けの都合に左右されやすいからです。請ける仕事が減れば、会社の売上はすぐに揺らぎます。単価も、相手の予算に左右されます。受託で積み上げた知見を、自分たちの商品の形にまとめ直せれば、収入の入り口を1つに頼らずに済みます。会社としての狙いは、この土台の分散にあります。受託の質を上げることと、自社の商品を持つことは、どちらかではなく両輪で考えています。

ただし、受託を続けながら自社サービスを育てるのは簡単ではなく、時間の取り合いが起きます。具体的に何をどう試しているか、そして受託と両立させるときに何が起きるかは、個人の働き方の視点でWeb制作の下請けから脱却するにはに詳しくまとめました。会社としても個人としても、一足飛びではなく、段階を踏んで選べる幅を広げていく過程だと感じています。

これから選ばれる制作会社の役割

ここまでを踏まえると、これから選ばれる制作会社の姿が見えてきます。求められるのは、作る速さや安さではありません。お客さまのビジネスの課題を理解し、Webで成果を出すところまで一緒に走れるかどうかです。AIにワイヤーフレームのたたき台を作らせ、浮いた時間を課題の理解や戦略の設計に使う。公開して終わりにせず、運用と改善まで伴走する。こうした課題解決の力が、会社の価値の中心になります。

言い換えると、これからの制作会社は、単なる「作る会社」から、「成果に責任を持つパートナー」へと役割が移っていきます。AIを脅威ではなく道具として使いこなし、人にしかできない判断と対話に時間を回せる会社が、残っていきます。

発注する側の目線で考えると、これは分かりやすくなります。お客さまが制作会社を選ぶとき、見ているのは価格だけではありません。自社の課題を正しく理解してくれるか、似た業種での実績があるか、公開して終わりにせず運用まで付き合ってくれるか、やり取りがスムーズか。作る技術が横並びになるほど、こうした「成果まで一緒に走れるか」の部分で選ばれます。逆に言えば、価格の安さだけを売りにしている会社は、AIやより安い会社との比較にさらされ続けます。自社の強みを、作る速さではなく、課題を解決する力として言葉にできているか。ここが、選ばれる会社と選ばれない会社を分けていきます。

内製化の波にどう向き合うか

会社にとって、もう1つ気になるのが内製化の流れです。お客さま自身がWeb制作を社内で担うようになると、外注の仕事が減るのではないか、という不安です。たしかに、簡単な更新や小さなページなら、社内のツールで足りる場面は増えています。

ただ、内製化がすべてを飲み込むわけではありません。社内で担えるのは、日々の更新や運用の一部までで、成果を左右する設計や、専門性の高い施策までは手が回らないことが多いからです。むしろ、内製の体制づくりそのものを支援したり、社内では判断が難しい戦略の部分を引き受けたりと、内製化を前提にした関わり方に需要が移っています。会社として、内製化を敵と見るのではなく、「お客さまの内製を助けるパートナー」に回れるかどうかが、分かれ目になります。

制作会社が今から取り組めること

では、会社として今から何ができるのか。大きな方針転換をいきなり決める必要はありません。手をつけやすいところから挙げます。

まず、自社の受託の工程を洗い出し、型の作業とそうでない作業を分けます。型の作業は、AIやツールに任せられないかを試します。次に、空いた時間を、お客さまの課題理解や提案の質を上げることに回します。ここが、価格でしか比べられない状態から抜ける第一歩です。あわせて、自社が特に強い業種や領域を1つ決め、その分野の実績と知見を発信していくと、価格ではなく専門性で選ばれやすくなります。

そのうえで、余力が出てきたら、受託で得た知見を自社の商品にまとめられないかを、小さく試します。ここは前の章で触れたとおり、一足飛びではなく、受託と両立させながら進める領域です。どれも、明日から全部やる必要はありません。工程の棚卸しという、いちばん小さな一歩から始めるのが現実的です。

職種や個人の視点は別の記事へ

この記事は、会社という主語で将来を見てきました。Webデザイナーという職種そのものが今後どうなるかは、Webデザイナーはなくなるのかで、消える作業と残る仕事を分けて整理しています。個人として下請けの立場から抜け出す具体的な手順は、Web制作の下請けから脱却するにはにまとめました。会社・職種・個人で、それぞれ見え方が変わります。あわせて読むと、自分の立場での次の一手を考えやすくなります。

まとめ

Web制作会社は、業態としてまるごとなくなるわけではありません。ただし、作る敷居が下がり、価格競争と内製化が進む中で、「作るだけ」の会社は選ばれにくくなっていきます。AIには型の作業を任せ、企画や設計、運用といった成果に責任を持つ役割へ移れるかどうかが、分かれ道です。私たち自身も、受託から自社サービスへ軸足を移す途中にいます。会社として、まずは受託の中の型の作業を洗い出し、AIに任せられる部分を切り分けるところから始めると、次の一手が見えてきます。

よくある質問

小さな制作会社や個人事業でも生き残れますか

規模の大小より、成果に踏み込めるかどうかが分かれ目です。小さくても、特定の業種や課題に強い、運用まで伴走できるといった強みがあれば、価格だけで比べられなくなります。むしろ小回りが利くぶん、AIを取り入れて上流に時間を回しやすい面もあります。

AIでサイトが作れるなら、制作会社に頼む意味はなくなりませんか

作るだけなら、その圧力は強まります。ただ、AIが出すのはたたき台で、誰に何を届けるかの設計や、成果を出す運用は人の仕事として残ります。頼む意味は「作ってもらう」から「成果まで一緒に考えてもらう」へと移っていきます。

これからWeb制作会社を立ち上げるのは無謀ですか

無謀とは言えませんが、「何でも作ります」という総合型は、価格競争に巻き込まれやすくなります。特定の業種や課題に絞り、その分野で成果を出せる専門性を打ち出せば、後発でも選ばれる余地は十分にあります。作る技術に加えて、成果まで踏み込める設計力を持てるかが鍵です。

自社サービスを持たないと、制作会社は続けられませんか

そうとは限りません。受託を深めて特定分野のパートナーになる道も十分にあります。自社サービスは、受託だけに頼る形の弱さを補う選択肢の1つです。会社の状況に合わせて、受託の質を上げるのか、商品を持つのかを選んでください。

本文中のAIツールでできる範囲や、受託から自社サービスへ移す取り組みについての記述は、当サイト運営元の実務経験にもとづくものです。転換は現在進行中の取り組みであり、完了した成功例として示すものではありません。作業時間などの定量的な数値は計測していないため掲載していません。EC市場の数値は出典元の公表値です。

この記事の監修者
橋本雄太郎 / NOTE INC. 代表
SEO歴15年以上。Webライティング・コンテンツディレクション10年以上。自社・クライアント合わせて100メディア以上の立ち上げとグロースを経験。