WebデザイナーのAI活用|仕事はどう変わるか実案件の工程で解説

「AIが使われるようになって、Webデザイナーの仕事はどう変わるのか」。ツールが増えていく中で、自分の仕事の中身がこの先どうなるのか、気になる人は多いはずです。
この記事では、Webデザイナーという仕事がAIでどう変わるのかを、私たちが実際の案件でAIを使ってきた経験から整理します。あらかじめお伝えしておくと、作業にかかった時間などの定量的な記録は取っていないため、「何割速くなった」といった数値は出しません。その代わり、どの仕事がAIに任せられて、どこに人が要るのかを、工程を分解して具体的に見せます。数字ではなく、仕事の中身の変化でお伝えします。
Webデザイナーの仕事はAIでどこまで変わるのか
まず、大きな見取り図です。Webデザイナーの仕事は、AIによって「なくなる」のではなく、「中身が入れ替わる」と考えるのが実態に近いです。AIに任せられる作業が増えたぶん、人はその手前と先の仕事に時間を移していきます。
具体的には、定型的な作業ほどAIに任せやすくなります。よくあるレイアウトのたたき台づくりや、バナーの案出し、デザインからコードへの単純な変換。こうした部分は、AIが速くこなします。一方で、誰に何を届けるかを決める戦略、情報を整理して分かりやすく並べる設計、お客さまとの合意形成といった仕事は、人に残ります。仕事が消えるのではなく、手を動かす作業から、考えて決める仕事へと、比重が移っていくのです。
なぜ今「Webデザイナーの仕事はなくなる」と言われるのか
不安の声が広がる背景には、AIで簡単なデザインやコードが作れるようになったことと、作る側の人数が増えたことがあります。誰でもそれなりの形を出せる時代になったぶん、「人に頼む必要が減るのでは」という見方が出てきました。ただ、実際の数字を見ると、Web制作の土台になる需要はむしろ広がっています。
たとえば、ネット通販の市場は伸び続けています。経済産業省の調査では、2024年の消費者向けEC市場は26.1兆円で、前年より5.1%増えました。買い物や申し込みの入り口がWebサイトやLPである以上、作って改善する仕事の総量は減っていません。
作り手の不足という事情もあります。経済産業省の試算では、IT分野の人材は2030年に最大でおよそ79万人足りなくなる可能性があるとされています。AIで一部の作業が速くなっても、企画から設計、改善までを任せられる人は、むしろ足りていないのが実態です。つまり、なくなっていくのは「手を動かすだけの作業」であって、Web制作の仕事そのものではありません。
出典: 経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年8月公表)/経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年4月公表・みずほ情報総研委託)(いずれも2026年7月取得)
実案件でAIが変えた仕事の中身
ここからは、私たちが自社サービスのLPを実際に制作したときの経験でお話しします。専門のデザイナーだけのチームではありませんが、AIツールを使いながら、企画から公開まで一通りを進めました。その中で、どの仕事がAIに任せられ、どこに人が必要だったかを、工程ごとに分解します。繰り返しになりますが、作業時間は計測していないので数値は出しません。工程の中身の変化として見てください。
企画の工程では、誰に何を伝えるLPにするかを決めます。ここはAIに壁打ち相手にはなってもらえますが、最終的に方針を決めるのは人でした。構成づくりでは、見出しや載せる要素の案をAIに出させ、それを土台に組み立てました。案出しが速くなったぶん、どの案を採るかの判断に集中できました。デザインのたたき台づくりでは、AIが形にしてくれる範囲が広く、ここは大きく助けられた工程です。ただし、ブランドの雰囲気に合っているか、伝えたいことが伝わる配置かの調整は、人が手を入れました。コードへの落とし込みでは、AIに指示を出しながら実装し、細かい修正を重ねました。公開後の確認と手直しは、実際の見え方をチェックしながら人が行いました。
この工程分解から見えるのは、AIが「作業を速める」役割を担い、人が「決める・調整する・確かめる」役割を担う、という分担です。どの工程でも、AIに任せきりでは完成せず、人の判断が要所に入っていました。
AI時代に評価されるWebデザイナーの条件
この変化を踏まえると、これから評価されるWebデザイナーの条件が見えてきます。1つ目は、AIの出力を見極める目です。AIが出したデザインやコードが、目的に合っているか、品質は十分かを判断できる力です。作る速さはAIが担うぶん、良し悪しを決める力の価値が上がります。
2つ目は、課題を解決する力です。お客さまが本当に困っていることを引き出し、それをデザインで解決する。この一連の仕事は、AIに指示を出す前の段階にあり、人にしかできません。3つ目は、上流の仕事に関わる力です。何を作るかを決める企画や、制作全体をまとめるディレクションに近づくほど、AIとの競争から離れ、代わりのきかない存在になれます。いずれも、手を速く動かすことより、考えて決めることに価値が移っている、という同じ方向を指しています。
AIを取り入れたWebデザイナーのある1日
仕事の中身がどう変わるかを、1日の流れとして思い描くと分かりやすくなります。あくまで一例ですが、私たちが制作を進めたときの感覚に近い形で示します。
午前は、その日に作るものの方針を固める時間です。誰に何を届けるかを人が決め、構成の案出しはAIに壁打ち相手になってもらいます。ここは考えて決める仕事が中心です。午後は、AIにデザインのたたき台を作らせ、それを見ながら人が調整します。案が速く出るぶん、どれを採るか、どう直すかの判断に時間を使えます。夕方は、コードへの落とし込みをAIに手伝ってもらい、表示を確認しながら仕上げます。
この流れで気づくのは、手を動かして作る時間が減り、考えて決める時間や、確認して整える時間が増えている点です。以前ならたたき台づくりに費やしていた時間を、方針を練ることや、提案の質を上げることに回せます。AIを取り入れると、1日の使い方そのものが、作業中心から判断中心へと移っていきます。
AIに任せる前に、人が固めておく2つのこと
AIをうまく使うために、任せる前に人が固めておくべきことが2つあります。1つ目は、誰に何を届けるかという方針です。ここが曖昧なままAIに指示を出すと、きれいだけれど的外れなものが返ってきます。2つ目は、情報の優先順位です。何をいちばん伝えたいのか、どういう順で見せるのかを決めておくと、AIの出力を評価しやすくなります。
この2つは、AIには決められない、人の判断の土台です。逆に言えば、ここを固める力を持っていれば、AIは強力な相棒になります。AIツールの使い方を覚える前に、この土台を鍛えることが、遠回りに見えて確実な近道です。
AIが作ったものを、そのまま使う前に確認すること
AIは形にするのは速いですが、出てきたものをそのまま公開するのは危険です。私たちも制作の現場で、AIの出力は必ず人の目で確かめてから使っています。ここは、上手に使うほど差がつくところなので、実務で確認している観点を具体的に共有します。デザイナーとしての価値は、作る速さよりも、この「確かめる力」に移りつつあります。
著作権と商用利用の範囲を確かめる
AIが作った画像や文章、コードには、そのまま商用で使ってよいかどうかの問題がついて回ります。使ったツールの利用規約で商用利用が認められているか、生成されたものが既存の作品によく似ていないかを、公開前に一つずつ確認します。あわせて、素材として組み込むフォントやアイコンについても、ライセンスの範囲を必ず見ます。ここを飛ばすと、後から権利のトラブルにつながりかねません。
書かれている内容が正しいかを裏取りする
AIが書いた説明文には、事実の誤りや古い情報が混じることがあります。数字や会社名、リンク先が正しいかどうかを、人が元の情報にあたって確かめます。もっともらしく書かれているほど見落としやすいので、そのまま信じずに、一度疑ってから載せる姿勢が大切です。この一手間が、記事やサイトの信頼を守ります。
サイト全体で見た目がそろっているかを整える
AIは一つひとつの出力は得意ですが、サイト全体のトーンや配色、余白のそろえ方は崩れやすいところです。ページやパーツを並べて見て、同じブランドの中で違和感がないかを人が調整します。AIが出した無数の素材の中から、そのサイトらしいものを選び、細かくそろえていく。この地道な作業の積み重ねが、全体の印象を決めます。
スマホでの見え方とコードの中身を確認する
AIが書いたコードは、パソコンの画面を前提にしていることが多く、スマートフォンの幅で崩れたり、横に余計なスクロールが出たりします。実際の端末で表示を確かめ、崩れがないかを見ます。あわせて、コードに不要な部分が残っていないか、読み上げなどに配慮できているかも確認します。動くことと、安心して公開できることは、別物だと考えておくのが安全です。
最終確認は別の目で、同じ手順で行う
作った本人は、思い込みで見落としをしがちです。私たちは、作った人とは別の担当が、あらかじめ決めた確認項目にそって、最後にもう一度見る形をとっています。毎回同じ観点で確認することで、公開後のトラブルをかなり防げます。AIを取り入れるほど、この「確かめる工程」を仕組みとして持っているかどうかが、仕事の信頼につながります。ここを丁寧にできる人ほど、AIの時代に選ばれます。
未経験や駆け出しは、今からWebデザイナーを目指して大丈夫か
これから目指す人にとって、いちばん気になるのがこの点でしょう。結論から言えば、目指して問題ありません。ただし、学び方は変わります。テンプレート通りに作る技術だけを覚える方向は、AIと競合しやすく、これから厳しくなります。
学ぶ期間の目安は、独学なら半年から1年、スクールを使うなら3か月から半年ほどが一般的とされています。ただ、これはあくまで基礎を身につけるまでの目安です。学ぶ中身としては、配色やレイアウトといったデザインの基礎に加えて、HTMLやCSSの読み書きも押さえます。さらに、AIツールの使い方を最初から並行して身につけるのがおすすめです。加えて、なぜこのデザインが良いのかを言葉で説明する力を鍛えておくと、AIへの指示にも、お客さまへの提案にも、どちらにも効いてきます。
おすすめは、最初からAIツールを使う前提で学ぶことです。AIにたたき台を作らせ、それを自分で調整しながら、なぜこの配置がよいのか、どう直せばよくなるのかを考える。この積み重ねが、AIの出力を見極める力になります。作る速さはAIに任せられる時代だからこそ、駆け出しでも、判断する力を早くから鍛えれば、経験の差を縮めやすくなります。AIを避けるより、AIと一緒に学ぶほうが、これからは近道です。
この先、仕事はどの方向に変わっていくのか
数年先を正確に言い当てることはできません。ただ、今の流れがどちらを向いているかは、これまでの変化からある程度たどれます。はっきりした年数の予測ではなく、方向性として読んでください。
近い将来は、たたき台づくりや単純な変換の多くをAIが担うようになり、人はその手前の企画と、後ろの調整や確認に時間を移していくと見られます。さらに先になると、見た目を整えるだけの仕事は価値を保ちにくくなり、事業の成果や使いやすさまで考えられる人に、仕事が集まっていく可能性が高いです。どちらも、この記事で見てきた「作業から判断へ」という同じ流れの延長にあります。方向がわかっていれば、今から何を鍛えればよいかも見えてきます。
これからのAIとの付き合い方
Webデザイナーにとって、AIは仕事を奪う相手ではなく、作業を速める相棒です。任せられる作業は任せ、自分は課題解決や設計、そして最終確認に集中する。この付き合い方ができるかどうかで、これからの仕事の質は変わります。
実際に制作の工程でどのAIツールをどう使うかは、WebデザインとAIで、工程ごとに詳しく整理しています。Webデザイナーという仕事がなくなるのかという不安全体については、Webデザイナーはなくなるのかにまとめました。AIを記事づくりなど他の実務に使う手順は、ChatGPTをSEOに使う実務手順も参考になります。
よくある質問
AIを使うと、デザイナーとしての力が落ちませんか
使い方しだいです。AIに丸投げして考えなくなれば落ちますが、出力を見極めて調整する使い方なら、むしろ多くの案に触れることで判断力は鍛えられます。AIに考えさせるのではなく、AIに作業させて自分が判断する、と考えると力は落ちません。
AIで作った画像やデザインは、そのまま仕事で使ってよいですか
使うツールしだいです。利用規約で商用利用が認められているかをまず確認し、生成されたものが既存の作品に似すぎていないかも見てください。素材のライセンスまで含めて確かめてから使えば、安心して仕事に取り入れられます。
AIツールはたくさんありますが、どれから覚えればよいですか
まずは、デザインのたたき台づくりや画像生成など、自分の仕事でいちばん時間がかかっている作業を助けるものから試すのが効率的です。具体的な工程別の使い分けは、制作工程を扱った記事にまとめています。
AIが普及したら、デザイナーの単価は下がりませんか
定型的な制作だけをしている場合は、下がる圧力を受けます。一方で、課題解決や設計まで担えるデザイナーは、AIでは代わりがきかないため、価値を保ちやすくなります。どの仕事をするかで分かれます。
本文中のAIツールでできる範囲や工程の分担、確認の進め方についての記述は、当サイト運営元が自社サービスの制作でAIツールを実際に用いた経験にもとづくものです。作業時間などの定量的な計測は行っていないため、数値は掲載していません。AIツールの機能や仕様は更新される場合があります。

